ひょうご就農支援センター

新規就農者の声Voice of seniors

先輩No.002
嫁さんは不安だったと思います!

自分の米を買ってくれて「美味しい」と言ってもらえるのが、嬉しい。

取材日:令和3年1月6日
姫路市北部、のどかな田園風景が広がる夢前町で、水稲を中心とした土地利用型農業で新規就農して5年目の河内俊哉さんを取材しました。

「自分の米を買ってくれて「美味しい」と言ってもらえるのが、嬉しい」

お客さんは個人販売がほとんど。

河内氏:お客さんの顔を見ることができるので、基本的には直接、宅配して います。飛び込み営業は行っていません。
お客さんからの口コミで増えたり、取引のあるケーキ屋さんで3合袋を置い てもらっていますが、そこから連絡してくれる人もいます。
直接、買いに来てくれる人もいますが、結構リピーターとして続けて買って くれています。
この人は続かないかな、というのも何となく分かりますが(笑)

「一度、農業を始めてしまうと、組織内で縛られる生活には戻れない」

農業をするきっかけは?

河内氏:学生時代から、機械いじりが好きで、近くの農業法人でバイトをしていました。

『農業をしてみたい』という気持ちはあったものの、『まず手に職を付けたかった』との思いで、車輌機械関係の企業に勤める。
しかし、溶剤などが体質が合わず、体調を崩して退職。そして、学生時代のバイト先でもある農業法人に改めて就職した。

河内氏:最初から独立を考えていた訳ではなく、年を重ねて、特に子供ができてから独立を考えるようになってきました。

農業法人社長との農業(特に土地利用型農業)に対する考え方の違いなどもあり、6年間勤めた後に退職して、 いよいよ専業農家として独立経営を目指すことに。農業法人で学んだ「水稲を中心とした土地利用型農業」での独立だったが…

河内氏:どんどん面積を増やしていくのではなく、きちんと管理できる面積(10~15ha)で、経営が成り立つ農業を考えてやってきました。
それが確立できれば、それを参考に、この地域でも土地利用型農業での担い手が生まれる。大規模な1経営あるいは1法人が地域全体を担うのではなく、 何人かで協力しながら地域を守っていく方が良いと考えています。
一度、農業を始めてしまうと、もとの組織内で縛られる生活には戻れないですね。

「周りの人たちの協力があったので、やってこられた」

農業を始めるに当たって周りの人とかには相談しました?

河内氏:同年代の新規就農者などにも相談したが、やはり地域が違うと条件などが違い、具体的な話になりにくい。
最近は、同じ地域の人に相談するようにしています。
ただ「やってみて、できなければ、また考えれば良いかな」ぐらいの感覚も持っていました。今でも農業経営を考える時に 米の価格が安定しないので、米だけではやっていけない。奨励金なども含めて転作作物の活用や野菜栽培との組合せを 考えなければならないと思っています。

土地利用型農業の場合、まず農地を集めなければならないのに併せて、 必要な農業機械を揃えるなどが必要で、新規就農にはハードルが高い。

河内氏:いったん農地を集めてしまうと、簡単には手を引けない難しさもあります。
地元に乾燥調整作業などで協力してくれる人がいたので、やって来られました。そうでなければ、できなかったと思う。
ただし、農業を始めた当初は、周りの人も半信半疑で見ていた部分もあり、自治会長さんが調整してくれたりもしました。
(反対意見も含めて)色々なことを言われ、ケンカになったこともあります。
始めて2、3年目までは、失敗しないように特に気を付けていました。それから周りの人たちに認めてもらえるようになりました。

「嫁さんは不安だった思います」

農業を始めるに当たって家族からの反対は?

河内氏:表立っての反対は無かったです。両親は、まぁやりたいんだったら やったら、という感じでした。でも、嫁さんは不安だったと思います。
子供も小さかった時に「どうなるか分からない」状態になったので、どこか企業に就職できるのだったらして欲しい、とは言われました(笑)

幸い、農業法人に勤めている時からお付き合いしているお客さんがおられ、「独立してもやっていけるかな、と思えるくらいの売り先は確保できそうだった」ので、独立に踏み切った。

実際に農業を始めて、どうでしたか?

河内氏:農業は基本しんどいもの、という印象はありました。
でも、実際に自分でやってみて、確かにしんどいですが、やり方ひとつで、しんどくない農業もあると気付きました。
50、60才代でもできて、15haぐらいを1人で作業できて経営として成り立つ農業を目指していきたいですね。
大規模経営を行っている農業法人に勤めていたこともあって、ついつい大きい機械が欲しくなりますが(笑)
不安としては、農業の基本的な事を勉強してこなかったので、行っている作業が正しいのかどうか分からない時もあり、不安になることもありました。
資料とかを見ても、この地域に合っているのかどうか分からなかったので、結局、地元の人たちが行っている作業を見ながら、学びました。

「村の役員は受けた方が良い」

営農以外で、必要なこと、心掛けておくようなことはありますか?

河内氏:村の役員になった方が良いと思います。特に水利関係。 ただし、代表は未だ無理なので、役員として実務に関わらせて、とお願いしています。

役割を担っていきながら、集落の中に入っていくことで、いろいろな協力を得ることができる。 県域の組織にも入っている。

河内氏:「農業を行っていく上で、地域や農業者同士での“つながり”は大事だと思います。
ただし、自分自身の仕事が疎かになってしまうので、自分に迷惑にならない範囲で役を受けるようにしています(笑)

「もっと貯金しとけば良かった」

農業以外の事も含めて、思っていた以上、あるいは想定外で大変なことは?

河内氏:機械類は、農業次世代人材投資資金などを活用して整備しています。 が、思っていた以上に増えてきています。やはり想定以上の資金は必要!
営農以外だと、田んぼの中で死んでいる鹿を道端まで運び出さなければならなかったりなど、想像もしていなかったこともあります。
獣害も多い地域ですが、集落で鹿柵を設置し、見回りをするなど、地域の人たちと協力しながら対策を行っているので、獣害は減りました。

中山間地でもあるので、大きな機械を持って大規模な経営を行う地域ではない。 下に見えるキャベツも河内さんの管理。冬の収入源として期待している。 農業はもちろん、家族のことでも想定していなかったことが起こったり、出費があったりで「やはりお金は必要」

河内氏:始めは親とは別に家を建てたいと考えていましたが、嫁さんにお願いして今は同居しています。
もっと貯金しとけば良かったと思います(笑)

取材を通して、言葉の端々に「地域」が出てきます。 「この地域で何ができるか」「この地域に何ができるのか」「この地域で仲間を増やしていきたい」などなど。地域に根を下ろし、地域と協力しながら、なおかつ、無理をせず長続きする農業を目指されています。 土地利用型農業での新規就農は、初期投資などハードルが高い面もありますが、共に協力し合う仲間を増やしながら、この地域を守っていってくれることでしょう。

新規就農(2021年1月取材時点)先輩DATA

氏名:河内 俊哉住所:姫路市夢前町寺 年齢:36歳

【就農から現在まで】 平成22年 離職 雇用就農(地元農業法人) 平成28年 退社 独立就農(5haの農地で利用権を設定) 平成30年 経営面積が9haに増える。 その後は徐々に増加している。

【農業経営の状況】 農地:910a(借地910a) 経営内容:・水稲6ha ・大豆1ha ・飼料作物2ha(酪農家と契約) ・露地野菜70a(ジャガイモ、タマネギ、キャベツ) ・水稲作業受託(移植、収穫)3ha 労働力:本人、妻、雇用(臨時)2名 出荷先:個人販売が主。あとはホームセンター、米穀店など

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